この熊野神社は小規模で、厚木市の中心地に鎮座する。だから、周りには建物も多くて、境内は狭い。だが、散歩の最初にお参りしたからか、雰囲気は悪くなかった。写真で見えるように道に鳥居があったし、手水舎もあった。確かに手水舎にはお水はなかったので、禊を略式の略式に余儀なくされたが、手水舎さえない神社もある。社殿も小さいので昇殿参拝は無理だが、しっかりした建物だし、彫刻もあるし、そして扉の上に古い社額が飾られる。
しかし、雰囲気を作るのは、社殿の後ろに聳える大きな銀杏だろう。見たら、まるで祠が神木の精霊を祀るかのようだが、そうではないと思う。銀杏は古いが、神社のほうが古いし、熊野神社といえば、和歌山県の熊野三社の勧請だ。だから、この銀杏は鎮守の森であると思ったらいい。一本しかないが、社殿との組み合わせでいい印象を与える。季節の新緑もあったので、それも雰囲気に貢献しただろう。
この神社は、渡辺崋山という明治末期の知識人が厚木市に訪ねたときに指摘した場所の一つだが、境内の前に歴史の案内板が立つ。この由緒もこの神社の現況を支えるのだろう。