御釜神社は、塩竈市に鎮座する塩竃神社の境外摂社だが、ちょっと珍しい神社だと言える。塩竃神社の御祭神の塩土老翁神がお塩の作り方を人間に教えたと言われるが、御釜神社で塩を作る為の鉄釜が奉納されている。毎年一回塩竃神社の例大祭のために使われるそうだが、7月の投稿に書いた通り数百年前からの御釜だそうだ。
この御釜は、神釜とも呼称され、板垣の内に普段に隠される。神職に頼めば、そして「拝観料」を納めれば、板垣を開けてもらって拝観できる。折角だったので、私が拝観することにしたが、そのとき、神職が二礼二拍手一礼の儀に従い、私もした。境内に案内板は二つあるが、一つによると御祭神は塩土老翁神だそうだけれども、それに対してもう一つによると鉄製の塩釜の四口が「祀られる」そうだ。だから、この神社のご神体は、鉄製の塩釜だと言ってもいいだろう。
塩釜というのは、海藻や海水を煮詰めて塩を造る道具だが、この神社の特殊神事は昔ながらの方法で塩を作ることだそうだ。私が参拝する三日前に行われたので、お守りとしてお塩をいただいた。この塩釜が少なくとも江戸時代初期以来この場所にあったし、塩竈市の地名がこの神社の塩釜に由来するそうだ。
神釜の所には屋根はないが、御釜の中の水には溢れることも涸れることもないとの伝説がある。それに、事変が来る場合、予兆として御釜の中の水の色が変わるとも言われたそうだ。現在もそうすると言われるかどうか分からないが、神職からこの伝説を聞いた。ただし、確か神職が言ったのは、「こう言われた」だったので、私が聞いたのは昔の伝説にすぎなかった。
私は、このような独特な神社は大好きだが、神社神道には少なくない。このような昔から受け継がれてきた習慣を保つ神社には特別な魅了があると感じる。