この本は神田明神で実際に行われた巫女のための入門講座の中級編を書籍化した本である。この前に、初級編の講座を本として出版したが、その前編で本当の入門にした。今回の本では、タイトルから推測できるように、作法に重点を置く。本は七つの「講」に分けられ、様々な作法を扱う。
第一講は、一般的な日本の作法を紹介する。立ち方から始まり、正座の座り方とか、部屋の入り方を経、食事の作法で終わる。食事の作法の一つとして、「無言で食べない」ということが書いてある。もちろん、噛みながら喋るのはダメだが、食事をすると共食する人と話すのは礼儀であるそうだ。別なことを聞いたことがあるが、この作法は良いと思う。
第二講は、お参りの作法とお祓えなどの歴史が書いてある。この講で、お参りの作法の変容を紹介するので、興味深かった。現在は二拝二拍手一拝であるのはご存知の通りだが、昭和17年までは二拝二拍手だったそうだ。最後に一拝を添えることがあったというが、正式的ではなかったようだ。江戸時代には、二拝二拍手祈念二拍手二拝という形式だったそうだ。そして、神社毎にこの作法が異なることも紹介する。例えば、神田明神では、神職が祝詞奏上をすると、二拝、二拍手、祝詞、二拍手、一拝という作法だが、一般の神社では二拝、祝詞、二拝、二拍手、一拝ということだ。
この多様性は神道の重要な要素であることはよく強調したが、この本と前の本がこの点を特に強調するので、神道の理解に貢献すると思う。
第三講は、神前結婚式についてである。ここも、式次第が神社毎に変わることは紹介されているが、流れが分かると思う。衣装の歴史などもちょっと紹介されているので、その点も役に立つだろう。現在の神前結婚式には、100年余の歴史しか持っていないが、それより古い伝統を踏まえて構成された式だから、日本の伝統の一部であると言えよう。
第四講は巫女舞の講義だ。内容は主に豊栄の舞の振り付けの紹介だ。本に基づいて踊れるようになれるかどうか分からないが、巫女舞を詳しく理解するために大変役に立つ。
第五講は茶道を紹介する。茶道は、神道と深い関係はないと言えるが、神田明神と江戸千家との間のつながりは強いようだ。この講を読んだら、伝統の伝承について考えさせられたが、そのことを後ほど書かせていただきたいと思う。
第六講は「神様と共に暮らす」というタイトルで、生き方や神田明神の由緒について紹介する。生き方は、礼儀を守って周りの人と慎んで接するという用言で包括できるだろう。
最後の第七講は雑学のようで、袴の畳み方も巫女についての万田の紹介もあるが、半分以上を占めるのは神田明神の当時現役だった巫女さんのアンケート調査だ。
この本は前の一冊を読まずに読めば、分からない点は多いと思うが、『巫女さん入門』と一緒に読んだら、ちょっと独特な角度から神道の良い紹介になると思う。お勧めである。