基礎収入は急に導入できる政策であるわけはない。莫大な財源も必要だし、社会の構造に大きな変更を齎すので、基本的に良いことであると確信しても、導入について慎重に検討すべきである。
しかし、それに難題がある。基礎収入が社会へ大きな影響をもたらす時点は、働かずに生活ができる水準を超える時点だ。それまで貧困を緩和すると思えるが、社会へ革命的な影響を与えない。その水準の下から上へ引き上げることは、一気にするしかないだろう。だから、社会への打撃は避けられない。
それを最大限柔らかくするために、どうすれば良いだろう。
先ずは、導入を始める前に財政再建を完遂させるべきだ。なぜなら、導入したら暫くの間多くの人が仕事を辞めて、休むことはあると予想できるので、一旦税収が激減して、財政赤字になる可能性は高い。長期的に考えれば、多くの人は働きたいと思えるが、短期的に待ちに待った休暇を取ることは当然だし、会社側がその瞬間に職業への誘導を完成させるとも思えない。だから、臨時的な現象として、働かない人が激増して、歳出も激増するが、税収が激減する。その場合、財政赤字に陥るのは当たり前だ。長期的な安定した状態に社会が戻るまでに財政を維持するために、大きな債務を負担しては行けない。
この条件だけで、日本での導入が遠い将来のことになりそうだが、それでも導入方法について考えたいと思う。
一気に導入することは危ないとしたら、どうすれば良いのだろう。すぐに思い浮かぶことは、基礎収入は基礎年金に近い金額だから、基礎年金を給付する年齢を下げることはできる。それは、基礎年金に限る方針である。厚生年金や年金基金からの年金は、65歳以上から給付することになる。
そして、子ども手当は存在するが、金額を上げたら、基礎収入に着実に近づく。そして、給付する年齢を上げることもできる。中学校を卒業するまで年間100万円を給付したら、子育てへの良い影響は多くあるのだろうが、働けるようになると、働かないと収入はない状況になる。
このように、高齢からも幼児からも基礎収入を給付される年齢が近づいて、段階的に空いている幅を縮めて、結局ずっと基礎収入を給付されるようになる。
それとも、金額を落として皆に給付することもできる。例えば、一ヶ月5千円から始めて、段階的に8万円強まで上げる。生活はまだできない金額でも、働く時間を短縮できるようになるので、自由を増す。そして、誰でも政策の利益を感じるので、支持は受け易くなる。
この方針を両方同時並行した方が良いだろう。基礎年金は、年金保険料を納めていない人にも給付する方針を導入して、そして子ども手当の金額を増して、中学校を卒業する年齢まで続ける。同時に、その二つの年齢の間の人に低額の給付金を与えて、金額を段階的に引き上げる。そうすると、なるべくゆっくり基礎収入の影響が明らかになるので、社会への悪影響を避けることはできるだろう。