最近、悲惨なテロ事件がフランスで起きた。去年末に、ソニーの子会社へのサイバー攻撃があった。それに対応するために、アメリカ政府は法律改正を企てているそうだし、フランス政府も法律の改正と取り組むのだろう。これは当たり前だ。事件で現行の制度の問題が浮き彫りとなるので、その問題を解消する行動はふさわしい。しかし、警鐘も鳴らさなくてはいけない。
ある事件に対応するために法律を立法することに、危険が付いている。法律は、一つの事件ではなく、一般の行動に対応する。もう過去になった出来事を防ぐ行動には意味はないので、将来の類似する事件を防止するのは目的であるから。そして、現行の法政で合法である行動を違法とする。その場合、何を違法とすることを慎重に検討するべきである。特に、テロ対策の法律は、住民の自由を制限する傾向も強いし、治安部隊の権限を増す傾向もある。自由な国にとって、この傾向は危惧すべきである。
それでも、変わりつつある状況に応じて法律を改正するのは国会の役割の一つであるし、すべての問題を事前に把握できるはずはない。だから、時事のことに対応する緊急立法を禁止してはいけない。
では、どうすれば良いのか。
問題は、ある事件で頭がいっぱいになって、法律の副作用の問題に気付かないまま立法させることだ。普段は、時間をかけて審議したり、有識者などから意見を募集したりするので、そのような問題を避けることはできる。もちろん、完璧ではないが、そのように審議を踏まえて立法すれば、深刻な問題は一応避けられるし、残っている問題は普通の法改正で解消できる。一方、審議をせずに立法すれば、許し難い結果があることは少なくない。独裁者が緊急事態を利用して権力を握りしめる例は少なくないが、民主主義の国でもこのような問題が見える。いい例はアメリカだろう。9・11事件に対応するための法律化、拷問を行ったことは、アメリカ国会の報告書によって明らかになっている。そのようなことを認める法律はあってはならない。
だから、基本的に審議する時間を取るのは必要である。しかし、緊急時には時間は取れない。緊急だからである。その代わりに、立法の後で時間を取るのは良い。つまり、立法する時点で有効期限を設ける。1年間は良かろうが、2年間でも可。短すぎたら、冷静に審議する機会は与えられないし、長過ぎれば、問題が長く続く恐れがあるので、ちょうど良い期間を考えなければならない。その有効期限が終わったら、また国会で採決する。
このような制度は、「緊急時」の定義と関わらないように、より客観的な基準を設けるべきである。それは、法案の公表から1年間か2年間が立つと、採決する基準である。法案を公表して、2年間審議して、採決すれば、有効期限は必要としない。十分審議されたからだ。一方、急に立法しなければならない場合、そうしても良いが、2年が経ったら、もう一度採決を採らなければならない。
もちろん、法律には問題があれば、改正案を出すことはできる。しかし、積極的にそうするために、かなりの支持が必要となる。法律を続かせるためには法案は必要であれば、積極的に維持しなければならない。完璧な措置ではないが、考え直させる措置は役に立つに違いない。