祭具

神道には特殊な祭具が使用されるが、これも神道の特徴の一つと言えよう。実は、これで複数の特徴があると言えるかもしれないが、細かく分けたら一つの投稿の内容に至らないと思うので、一括に取り上げたい。

祭具の中にかなり長い歴史を持つものもある。例えば、「案」と言われる8本の足を持つ机は、古墳時代の遺跡から発掘されたことがある。神道が現れたのは古墳時代だったと私が思う理由の一つは、このように祭具がその時代まで遡る現象だ。他の祭具の歴史はそれほど長くない。例えば、神職の装束は平安時代の貴族の服装に倣っているので、歴史は1000年程度で、神道の特徴になったのは鎌倉時代以降であるとも言える。(ところで、巫女の装束は、平安時代の女性の下着に倣っているようだ。紅の袴と白衣は、肌着として十二単の下に着したそうだ。1000年先の巫女の姿を楽しみにしていると言わない方が良かろう。)それでも、今になったら、他の宗教や習慣には殆ど見えない。時代祭や雛祭りの人間での再現の場合ぐらいかと思う。日本の伝統衣装も、室町時代以降の小袖になっているし。

注連縄や御幣の歴史は、奈良時代まで遡るようだし、神道色を添えるものである。稲藁から作成された縄で生地を区別する習慣は、他の宗教にはない。縄で境を示すこと自体は、宗教には珍しいと思うが、稲藁を使って、そして紙垂を付けることは、神道の雰囲気を齎すと思う。紙垂と御幣の形も、神道の特色を伝える。稲妻の模様であると言われるが、ここも稲との密接な関係が見える。祓え串の普通の形式も、木の棒に紙垂をたくさん付けることになっているので、その形の歴史は長くなくても(よくわからないが、もしかして明治時代に普及したものかもしれない)神道によく使われた要素を組み入れられるので、神道の特色を維持すると言えよう。

晴れ串のもう一つの形は、榊の枝に紙垂をつけたものだが、それは玉串と同じである。そして、神社の拝殿に真榊という調度品が飾られることは多いので、榊を祭具に採用することも、神道の特徴の一つであるのではないか。木々を彩色に使用する宗教は確かに存在するが、榊は日本やその周辺に生息する木だから、これも特徴になる。

鏡、剣、勾玉を先日に触れたが、それは祭具として使われることは少ない。一方、鈴はよく使われる。拝殿の前に大きな鈴を垂らすのは普通だし、参拝の作法の一部として鳴らすのは基本だ。そして、巫女舞の持ち物として、神楽鈴は良く見える。鈴は、仏事の鐘やヨーロッパの教会で使われる鐘と大きく違うので、この用法も神道の特徴になるのではないか。

この記事は、様々な点を挙げる内容になっているが、この話題でそれは適切だと思う。神道の祭具には統一する論はないと言えよう。それより、伝統的に使われている祭具類は多い。だから、この特徴は、最初に掲げた「大八洲の伝統」の特徴の具体例として考えてもらっても構わないだろう。


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