実態調査の職業と経済状況についての結果も興味深い。この側面でも、川崎市の外国人市民の多様性が浮き彫りとなるが、この結果は明らかに川崎市についての結果である。職業についての考察を執筆した竹ノ下先生は、静岡県でも同じような研究を行ったことがあるそうだが、その結果は大きく違ったという。川崎市の結果はもしかして首都圏全般の状況を反映するだろうが、地方の状況と違うのは確実であるようだ。
先日に述べたように、外国人市民の正社員は日本人市民の正社員より少ないし、貧困の外国人市民も多い。他方、経済的な余裕がある外国人市民も多い。考察で、この状況をさらに検討した。
まず、性別によっての差は著しい。これは、日本全般の労働市場の不平等を反映すると言われる。つまり、女性の正社員は男性よりはるかに少ないし(女性は22%、男性は52%)、女性のパートは男性よりはるかに多い(女性は22%、男性は6%)。そして、非労働力の女性も多い(女性は27%、男性は13%)。これは、外国人市民の問題ではないが、安倍政権の「女性が輝く社会」が実現されたら、解決されるのだろう。日本の社会がこの問題を認めたと言えるので、これから実際に解決しようとするかどうかは見たい。
そして、外国人市民の正社員の割合は日本人市民より低いことは、簡単に解釈できないと思う。なぜなら、差はそれほど大きくないし、滞在期間はまだ短い外国人市民は多いからである。このような人は正社員にまだなっていない可能性は極めて高いと思えるので、日本人と同じ割合になれないのではないかと私は思う。一方、永住者と特別永住者に分析を限れば、割合が等しくなるべきだろう。そのようなクロス分析も必要です。
さて、国・地域別の分析の結果も興味深い。特に、正社員の割合は一番高いのは、中国人である。それは一般のイメージと違うような気がする。一方、欧米人の正社員の割合は低い方である。これも、イメージと違う。このことに、職種が大きな影響を及ぼしていると思える。言語と関連する仕事に従事する割合は、欧米人は圧倒的に多い。欧米人の45%は言語と関連する仕事をしているが、それに次ぐ割合は中南米の13%である。言語教師や通訳などの仕事で、正社員は少ないようだから、これは欧米人の正社員率を抑えるのだろう。この事実は、もう一つの結果の説明になるだろう。欧米人は、正社員率は低いが、非婚率も低い。その説明は、言語と関連するパートや自営業の仕事の時給は高い場合は多いことであると思える。
もう一つの指摘したい結果は、大学を卒業した外国人市民の多くは、専門職や管理職に就いていることだ。つまり、川崎市で自分の学歴に相応しくない仕事をしている外国人市民は少ないようだ。これはもちろん良いことだし、日本の入国政策が効いている証拠にもだろう。ただし、この調査の対象者は住民基本台帳に登録されている外国人に限るので、不法滞在の人は除外されている。
最後に、貧困率は高い国籍はフィリピン人である。ひとり親世帯もこの国籍で多いようだから、支援策を充実させるように頑張るべきだろう。このような事実が明らかになったのは、この調査の大きな成果の一つだと思う。