川崎市外国人市民実態調査では、自由記述欄があった。一つは、「川崎市に住んでよかったこと」だし、もう一つは、「外国人市民が暮らしやすい社会にするために必要なこと」だ。前者は、代表者会議で提案され、調査の結果が批判ばかりにならないように加えられたが、効果があったと思う。その欄の記述を読めば、川崎市のPRに使えるのではないかと思った。この記述された内容は、統計的な分析はできないが、外国人市民の生活をもう少し把握できるのではないかと思う。この投稿で、差別についてのコメントに焦点を当てたい。
暮らしやすい社会を作るために差別をなくすべきであると書いたことは、75件に上ったし、テーマとして第一だった。(ただし、通訳・翻訳と日本語学習をあわせると、100件になるので、言語の問題もかなり重要であるのは明らかだ。)この中で、「差別をなくすこと」という内容にとどまるコメントは多いが、より具体的に指摘することもある。
頻繁に出てくるのは、賃貸の問題だ。外国人を断る大家さんは少なくないようだ。統計上の結果でも、2割以上がそのような経験があったと言ったので、やはりこれは問題であると言えよう。15年前に川崎市がこの問題と取り組むための制度を設けたが、その制度の実施と効果を検討するべきなのではないか。少なくとも、問題の解決になっていない。
警察の「無意味の職務質問」を訴えるコメントも2件あるが、それはイギリス人とアメリカ人からのコメントだ。これは、統計的な結果を裏付ける。つまり、警察に呼び止められるのは、欧米人である傾向はあるようだ。行政の公務員の態度を批判するコメントは少なくないが、ちょっと意味不明なコメントもある。例えば、外国人が日本人と同じように救急車のサービスを受けられるようにしてほしいとのコメントがあるが、そのことには差はないと思う。もしかして外国語ができる人が救急車の乗組員になることかと思うが、やはり当事者の認識は必ずしも事実と合うとは限らない。
一方、「川崎市に住んでよかったこと」で、差別に触れるコメントもある。「病院でとても良い態度だった」(オーストラリア人)とか「警察官や職員は外国人に対して丁寧な対応をします」(ベトナム人)とか「子供の学校はとてもよく、嫌がらせやイジメにあったことはない」(アメリカ人)とか「外国人に対しても優しいです」(韓国・朝鮮人)などのコメントが見える。
そして、差別を明記することもある。
「あまり差別らしい差別は受ける機会はありません」(日本生まれの韓国・朝鮮人)
「外国人と日本人の差別はありません」(ベトナム人)
「差別はない」(中国人)
「この市の人々はとても優しく、外国人に対して良い印象を持っていると思う」(タイ人)
「外国人に対しても優しいです」(韓国・朝鮮人)
「外国人であっても、差別されたことはありません」(インド人)
「外国人の扱いがとてもあたたかい」(ガーナ人)
「川崎市の人々は差別なく、マナーが良い」(フィリピン人)
上記の例は全てではないが、国籍の多様性は強調したかったのだ。その上、人は「親切」や「優しい」と称えるコメントも多いので、そのような印象で差別と合うとは思えないだろう。
ここで浮き彫りになるのは、個人の経験の多様性だ。病院や公務員の態度についての正反対になる記述があるが、いずれかが嘘をついたとは思えない。そして、その点を踏まえて、もしかして川崎は他の日本の地域と違うだろうとも思ってくる。川崎市では、この20年外国人市民への対応を改善するように努力してきたので、成果があっただろう。20年前と大きく変わったとのコメントもあるので、その可能性は十分ある。やはり、同じような調査は、別な地域で行ってほしい。
それはともかく、この結果に基づいて言えることは二つだと思う。川崎市にくる外国人に対して、差別は少ないのでご安心くださいと言える。市政に対して、差別はまだ残っているので、撲滅する対策をさらに構えるべきだと言おう。この問題について、私は市の行政の側にいるので、改善策をさらに考えていきたいと思う。