この言葉は、大祓詞の最初の文句だが、この場合10年前の漫画のタイトルだ。この漫画、神社を舞台として、女性神職を主人公にする。舞台の神社は、代々木八幡宮をベースとしているので、都会に鎮座する神社だが、周辺は詳しく描写されていない。
この漫画は、どう言えばいいのだろう。ちょっと複雑な感想になっている。
まずもって、絵はものすごく綺麗である。顔も装束も丁寧に魅力的に描かれている。そして、この点で取材が効いたと言えよう。神社のように見える。
そして、話は優しく展開するし、登場人物の間の関係を描く。
それでも、結局ちょっと満足できない。具体的な点から始めよう。主人公の女子神職はいつも男子の装束を着ている。最後の方には、話の中で指摘されているが、もしかして作者は最初に間違えたのではないかと思う。わざとそうしたら、話の展開には重要な役割を持つべきだ。しかし、そうならなかった。同じようなこともあった。話の重要な点になりそうな内容が展開しないことや、急に不思議な展開が発生すること。
その上、神道の内容は話にあまり使われていない。最初の方で一つの神道関係の言い伝えは重要であるが、それ以外神社ではなくても、老舗の料亭でも舞台にできたことは多かった。
後書きを読めば、仮説は立てられる。作者は、最初からこの漫画を描きたかったわけではない。描きたかったのは戦国時代のものだったが、少女漫画雑誌に属していたのでそれは不適切だったと判断した。担当者に「神社のものはどう?」と言われたので、神社のものになったそうだ。もともと神社が好きな方だそうだが、知識などはなかったと自分で言った。つまり、何を書くべきかはわからなかっただろう。そのため、話の展開ははっきりされていないし、神社の内容はあまり取り入れていないし、話の結びもうまくいかなかった。
これは、作品を作ろうとすればたまにある結末だ。作品の製作には必ず成功するとは限らない。そして、完全な失敗ではない。最初に言った通り、絵は大変綺麗だし、主人公の性格なども面白い。問題は、話は確実にできなかっただろう。
結局、お勧めにできない作品だが、良い点も少なくない。読んだことは一切後悔しない。