後ろから真理安の呪文を唱える声を聞きながら、華多離菜が自分の結界に集中した。遠くから入り口付近の渦巻きの崩壊を感じたが、牢獄の入り口はまた閉ざされたので水の近く音はなかった。しばらくの間何もなかった。囲いの中の闇は沈黙で、動きもしなかった。緊張感がさらに高まる中、攻撃を待ち受けるように気を引き締めた。
打撃は後ろから来たので、一瞬華多離菜は応じられないかと思ったが結界はその一瞬崩れないでくれたため力を回して悪魔の襲撃を打ち返した。体は動かなかったが、拳にはあざが現れた。真理安の呪文が流暢に続いてきて、部屋の力の動きは華多離菜さえ感じられた。
次の打撃は下からだったが、華多離菜はもう八方に向けていたので対応に苦労しなかった。それでも針のように鋭く刺す攻撃で、氷の槍かのように感じながら太陽の熱で避けた。顔には、血が点々湧いて、汗のように流れ落ちた。呪文がまだ続く。力が渦巻くようになっていたが、結界も揺れるようになってきた。
囲いの中から大きな悲鳴が湧き上がって、部屋を響き渡して、華多離菜の頭をいっぱいにした。結界に集中できなくなって、その崩壊の予兆を感じるか否かまた引き締めて直しに尽力を注いだ。
真理安の呪文は、一言たりとも欠けずに大川のように流れ続けた。
悲鳴が止まらない。部屋の中の明かりの全ては弱まって、消えた。目の前の結界の明かりさえ見えなくなったが、それでも感じられた。結界には何かが押して、欠点を探すかのように全体を渡った。
呪文の流れは、せせらぎの音になった。
地面が跳ね上がって、華多離菜が膝に落ちて、手が岩についた。後ろから、真理安が華多離菜の上に落ちたが、呪文がそれでも止まらない。背中に華多離菜が震えている真理安の手を感じたが、真理安が押して、また立ち上がった。華多離菜も立とうとすると。
頭が割れるほどの痛みが体を貫いて、結界はシャボン玉のように揺れて、裂けた。
呪文が止まらない。
荒い息を呑みながら華多離菜がまた結界を立てようとしたが、闇がすぐに壊す。火傷の痛みが指先から始まって、手と腕を登ってきた。それさえ止められない華多離菜は、結界を構えることは無理だった。
真理安の悲鳴が呪文の終止符になった。
火傷は胸に及んだ。真理安の悲鳴は止まらず、華多離菜も抑えられなくなった。
「これは死亡か」と華多離菜が考えた。
白くて涼しい光が部屋に注いで、痛みを流した。華多離菜が目を上げると、女列安道が囲いの前で構えて、闇に向かって対立した。
振り向かずに命令を吐き出した。
「愚娘、逃げろ。」