椿堂18

羽空が言った通り、傍聴者席はほぼ満席だったが、真理安と華多離菜が入った途端、人はほとんど二人を見つめて、男子学生の二人が最前列の席を譲ってあげた。

「女性の特権か。」と真理安がつぶやいたが、華多離菜が丁寧にお礼をあげた。座っても、周りの人が覗き見て、囁かれた噂が飛び交った。二人とも、断片的に聞き取れた。

「あの二人・・・」

「・・・封印を滅び・・・」

「・・・殺されかけた。」

真理安は、理事会の座席を見つめて、聞こえないかのような顔をしていたが、華多離菜が赤くなって、自分の指先の詳しい分析に集中した。

理事はもう席に着き始めた。羽空はもちろん座っていたが、二人も隣にいた。その後、もう一人が着いたので、真ん中の席のみ空いたままだった。それで、谷入が大きな声で発表した。

「頭魔主評議員会会長おなり!」

部屋が静かになった中で、頭魔主が入って、真ん中の席に着いた。

「はい。始まる前に、傍聴者の皆様へ規則を伝えます。」頭魔主が始まった。「審議の途中で、言いだしたり、拍手したりしてはいけません。騒ぐ者は、部屋が追い出されます。では、女列安道大師、お願いします。」

女列安道が傍聴者の席の下から現れて、理事会の前に立った。

「よろしくお願いします。」

「はい。では、二人の学生に悪魔の牢獄に入るように命じたという件ですが、間違いはないでしょうか。」

「間違いはありません。」

「なぜそのようなことをしたか、聞きたいのですが。」

「はい。長くこの理事会に働きかけてきましたが、牢獄の結界や警戒措置はもう古くなりました。危険です。力を合わせて、刷新するべきです。しかし、度重なる要求に対して、度重なる言い訳しか受けていません。この状況は続いてはいけません。如何に監視主役であるとしても、裁量で封印などを変更するわけにはいきません。長期的な安全を確保するための緊急措置でした。もちろん、二人の行動を観察しましたので、大きな危険性はありませんでした。ただし、不慮の侵入があったら、巻き返しがつかない状態になりかねません。現行の警備の不備がこの件で明らかになりましたので、一緒に改善を諮るべきです。」

「それこそは言い訳なのではないか?」頭魔主が厳しく追及した。「監視役の指導抜きに誰も入れないでしょう。」

「あ、すみません、理事長、ちょっといいですか?」羽空が手を挙げて、言い出した。「先ほど当事者と話しましたが、そのような指導はなかったようです。」

「信じがたいですけど。」

「そうですね。特に女子学生でね。それでも、少なくとも当事者はそう信じています。女列安道大師は、ここで判断が誤ったとしても、学生の心を乱入することはあるとは到底信じられません。他の者が企んだ可能性は充分考えなければなりませんが、女列安道大師が指摘する危険性を認めなければならないのではないでしょうか。」

「判断は妥当だったと言いたいのか?」

「いや、理事長、それまで言えません。乱暴なやり方であるとは思わざるをえません。しかし、その動機を真摯に受け止めた方が良いでしょうか。」

「そうですか。皆さん、どう思いますか?」他の理事も頷いて、賛成した。

「そうですか。では、動機を認めることとしたら、理事会で処分を決めてはいけません。行議員会の全体会に回すべきです。」理事がまた頷いた。頭魔主が続いた。「しかし、羽空理事が仰る通り、乱暴なやり方で、このような無責任な行為が繰り返されさせてはいけません。仮処分は適切だと思います。どうですか?」他の理事はまた頷いた。

「では、女列安道大師、この理事会は仮処分として資格停止を下します。評議員会の定例会で本処分を決めるまで、大学の資格の全ては停止とします。女列安道さん、下がってもいいです。」


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