利益主義脱却

欧米では、企業の目的は株主に利益を与えることであると言われる。法律でも定まっているそうだ。会社が株主の利益を最優先しないと、訴訟できるという。この投稿で、この構造に反対したいと思う。

確かに完全に不可解な規定ではない。形式上、株主が自分のお金を企業に投資するので、その預かり金を責任を持って使うことは重要である。しかし、大事であるのは、株主だけではない。従業員も重要であるし、客も重要であるし、環境や社会も重要である。利益を最優先すれば、最近発覚された事件が招かれる。

例えば、処分するべきだった食材を横流しして、消費者に渡すことは、利益主義の立場から当たり前な行為だ。そうすれば、処分するための収入も得るし、横流しの収入も得る。その上、処分の費用はない。利益は数倍に増えるだろう。もちろん、発覚されたら大変だが、隠蔽すればその可能性は低いだろう。発覚されていない事件はまだまだ残ると思わざるをえないだろう。

一方、利益を無視すれば、企業が倒産する。しかし、目的は、本当の目標を実現するために足りる利益であるべき。すべての経費を賄って、将来への投資もできるほどの利益は良い。しかし、それは目的のために使うので、目的を裏切る方法で利益を得ても意味はない。この場合でも、金の無駄遣いを当然避けるが、目的に資する出費は無駄遣いではない。その出費が直接に利益と繋がらなくても、そうである。

目的と言えば、選択肢はたくさんある。私は、出版業の経験は多いので、具体例をその業界から挙げる。まず、内容は興味深い、よくできた本を世に届けることを考えよう。これを目的とする企業は、本の売り上げをそれほど考えない。作者の報酬に印税を当てて、最初に出すお金を最低限に抑えるだろう。そして、本の物質的な性質にはそれほど気にしない。電子版は良いし、印刷すれば安い印刷にする。高級な物質は会社の目的ではないからだ。本が人気になったら、その収入の一部は作者に戻して、さらに本を書かせる。多くは、他の本を出すために使う。

もう一つの会社は、高級の本を出すことを目的とする。デザインなどに拘って、印刷代は高くなる。そして、内容は主に広く認められる古典を選ぶだろう。歴史的な文学などを重視する。内容は良くなかったら、本は高級ではないが、新しい内容なら、性質を判断するのは本当に難しい。利益は、経費を賄ったら、他の本の出版に使う。

そして、別な会社は、作者の育成を目的とする。編集者の給料には収益の多くを使うし、印税を作者に戻す。そして、本の宣伝にも力を注ぐ。育成された作者が大ヒットになったら、その収益を別な作者の育成に使う。

この三つの会社の方針は大きく異なるが、利益を最優先しない。良質な商品を出すが、その「良質」の意味も違う。企業は、このような目標を決めて、公表するべきだと思う。そして、企業の関係者は、目的に貢献しない経費について訴える権利を与えた方がよかろう。このような考え方が広がったら、商品の品質が高まると思うし、不正も少なくなるのではないかと私は思う。


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