この本は、神社検定の公式テキストの9冊目である。テーマは『古語拾遺』であるのは言うまでもないだろう。『古語拾遺』というのは、9世紀冒頭に斎部広成(いんべのひろなり)という人が著した書物だ。斎部の氏族は古代から祭祀と関わってきた氏族だったし、当時広成はもう80を超えていたので、この書物で忘れかけられた伝承を書き留めて、天皇に献上するつもりだったようだ。神話の内容は主に記紀神話に近いが、相違点もあるし、9世紀の祭祀実態についても学べる。『古語拾遺』自体は長くないが、(この本の40ページを占めるだろう)古代の神話や神道に光を差す重要な書物であると思われる。
この本は3部構成で、第1部は『古語拾遺』の現代語訳と簡単な解説である。第2部は、歴史的な背景を説明したり、『古語拾遺』の受け止め方を紹介したりする。第3部は、より細かい解説になる。第3部に、『古語拾遺』の現代語訳をもう一度載せて、それとともに『古事記』や『日本書紀』、『延喜式』などの古典からの抜粋もある。それで、『古語拾遺』の内容と他の古典の内容を比べることはできる。そして、解釈や背景についてのより細かい説明も載っている。検定試験の場合、第1部は3級用で、第2部と第3部は2級用であるそうだ。これで、試験の勉強がちょっと楽になると思うが、私はもう合格したので再度受験するつもりはない。
この本は、高く評価する。まず、『古語拾遺』自体を読む機会は記紀神話ほどないと思うので、入手しやすい本で現代語訳と解説が出たのはありがたいのだ。私も、前から『古語拾遺』を読むべきだと思ってきたので、この機会を与えていただいて嬉しかった。その上、現代語訳は分かりやすいし、解説で問題点と他の古典の類似点が丁寧に指摘されている。例えば、広成の主張は他の史料でも見えるかどうか、そして広成の時代の後でどうなったかについての紹介がある。特に参考になるのは、『日本書紀』の一書の引用や『延喜式』の祝詞などだろう。このような本を読もうとする人は、『古事記』の神話を知っていることは多いと思うが、『日本書紀』の一書の言い伝えは、『古事記』に似てる場合もあるので、『古語拾遺』がどの系統を汲んだかはわかるために、参考文献は必要となる。実は、前書きで『古語拾遺』が日本の神話の入門に適切であると作者が主張するが、まさしくその通りだと思ってきた。短いし、重要な点をほとんどカバーするので、『古語拾遺』の後で『古事記』を読めば、構造をもう把握しているのでわかりやすくなるのではないかと思える。
神社検定の公式テキストのシリーズは、本当に神道の勉強に大変役に立つ品揃いになっている。将来に、「風土記」や「祝詞」、「宣命」、または『先代旧事本紀』などをテーマとする本の出版を期待している。
日本神話や神道に興味を持っている方なら、この本のご一読を強く勧める。