選挙の一番重要な役割は政権を落とすことを可能とすることとすれば、選挙制度を考えなければならない。制度によって、政権に反対の一票を投じる方法は明らかではないからだ。
例えば、小選挙区の制度で、四人が立候補するとしよう。その一人は与党の候補だから、その人に投票しない。が、誰に投票すれば良いのか。政権に反対する人は70%でも、他の候補に割り振ったら与党の候補は30%、野党の候補は23%ずつになるので、与党が勝利する。反対するために、投票の戦略を巧みに考えなければならないが、そうであれば有権者が間違えることは多いだろう。
中選挙区はさらに難しい。特に、三人が当選するが、一人にしか投票できる制度であれば、どこに投票するべきかは全く不明である。そして、与党にはある程度の指示が残ると、少なくとも一人が当選することはほぼ確定である。日本の経験から判断すると、やはり政権交代を難しくする制度だから、避けたほうが良い。
有力政党は二つしか存在しない場合、選挙制度は大きな問題にならないだろう。選択肢は唯一の与党化、唯一の野党か、ということになるからだ。しかし、その場合、選挙の役割は政権交代に限ることになる。それも良くないと思う。民主主義の一番重要な役割は政権交代を可能とすることであるのは確かだが、それは唯一の役割ではないのだ。有権者の意思を政権に伝える役割も重要である。確かに前述した通り、有権者の意思が正しく伝わるかどうかは難しいが、伝える方法として良いと思われる。そうするために、有権者には自分が賛同できる選択肢を提供しなければならない。有権者は多種多様であるので、二つの政党ではすべての有権者に賛同できる選択肢は到底提供できないだろう。もちろん、選択肢を1億提供することもできないが、5つか6つの政党があれば良いと思える。
その場合、どうすれば良いだろう。すべてを比例代表とすれば良いのか。私はそう思わない。すべてを比例代表とすれば、単独過半数の結果は非常に少ないので、連立政権が組まれる。その場合、与党になるかどうかは、有権者の票によってではなく、政治家の間の交渉によって決まる。選挙区の制度のほうが良いと思う。(他のメリットもある。例えば、自分の議員が存在することは大きい。)ただし、投票制度を見直したほうが良いとも思う。
私は単記移譲式投票が良いと思う。この制度で、投票で候補者を優先順位に記載する。一番支持する候補者には1を、その次の候補者には2を、そして3、4を書く。全く支持しない候補者には何も書かない。そして、票を数える場合、まず1になった人に当てる。そして、一番少ない票を得た人の票を、2と書いた候補者に回す。これで一番少なくなった候補者の票を2か3と書いた候補者へ。もう番号は書いていない票は捨てられる。この作業を繰り返して、やっと候補者が二人に絞るので、票が多い人が当然する。(もちろん、最初の数えで一人の候補者が過半数を占めたら、当選になる。同じように、過半数になった時点で当選する。)
この制度では、政権を落とすために、ただ単に野党の候補者に番号を書けば良い。他の人の野党の順番は関係しない。一番支持を得た野党の候補者には票がどんどん集まるからだ。一方、自分の意思も表せる。一番賛同できる候補者に1を書いて、そして順に書けば、すべての結果が公表されるので誰がたくさんの支持を得たかは明らかになる。
この制度でも有権者の意思がきちんと伝わるとは限らないが、政権を落とすことは確実にできるし、意思がある程度明らかになるので、現行の制度の改善になると思う。ただし、政権交代の促進にもなると思うので、現存の政治家には、導入するための勇気はあるのだろう。